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ものづくりという新しいメディア、コミュニケーション〜講演会「図書館と3Dプリンター:海外の動向」@SFC

1月20日(月)、SFCの湘南藤沢メディアセンターで講演会「図書館と3Dプリンター:海外の動向」が開催されました。3Dプリンタを日本で初めて大学図書館に導入したSFCでの使われ方や海外の動向について、環境情報学部の田中浩也准教授と田中研究室の学生が話しました。


空き限だったので参加してきました。生徒の参加よりも学外から来た(と思われる)方の参加が多かったです。雑ですが講演の要旨メモをおいておきます。

◆第3次産業革命

80年代に生まれた方はよくわかると思うが、大型計算機がパーソナルコンピュータになり、技術の意味付け、使い手、文脈が変わった。デジタルファブリケーションの部門で似たようなことが起こっている。

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3Dプリンタは30年前からあったが、デザイナーや専門家が工業製品の試作品をつくるための工作機、特殊なものとして使われて来た。2008年に特許がとれたことを皮切りに、普通の人達が知的、創造的活動をするパートナー、メディアとして普及しはじめた。今まで大企業しか持てなかったものがパーソナルに。ユニークでニッチな製品をつくってビジネスができるようになった。第3次産業革命と言える。

3Dプリンタで新しい情報文化をつくる

その一方で、3Dプリンターにはもうひとつの側面がある。それは、新しい情報文化をつくるということ。このキャンパス(SFC)は20年前、日本で最初にインターネットを始めた大学。インターネットのクリエーションを実践してきたが、それは画面の上だけのクリエーションだった。リアルな場の重要性がどんどん下がり、画面に没入するようになった。人と人とのコミュニケーションがバーチャルに浸透してリアルが希薄化した。


ものづくりをリアルで行なうことが、新しいコミュニケーションの方法。物質を汲み取ることができる新しい情報文化になっていくのではないか。SFCではものをつくることを専門とした研究室が使う本格的な工房と、情報活動ができるメディアセンターとの両方で(ものづくりが)できる。学生は理系的な人たちだけではない。社会学や心理学やコミュニケーションを専門とした学生がたくさんいる。そのような学生たちが、新しい技術をつかって、どんなものをつくっていくのか。


私たちは無意識の中にもののカテゴリを分類しながら生きている。3Dプリンターは工作機会の枠組みだったが、これからはメディアの枠組みになるのではないか。PCやワープロなどのように日常的に表現をしたり編集をしたりするものになっていくのではないか。

◆導入から1年、学生たちはどんな利用をしているのか

SFCFabスペースでの事例。2013年4月に導入。SFC3Dプリンターがあることの意味はなにか。取り扱っている分野が幅広いので、それに3Dプリンターが加わったときに何が起こるのか。趣味、授業、研究室などで様々なものがつくられた。漢字書き取りに使う3股鉛筆は反響があった。データ共有サイトにアップしたら海外含め200件くらいのダウンロードがあった。防災学の研究室とのコラボでは、いつでも携帯できるタバコ型ホイッスル、脳科学の研究室では標準脳ではなく個人の脳の作成が行なわれた。学生が3Dプリンタコンサルタントを務め、データの作り方などのアドバイスを行なっている。9ヶ月で一般の学生約320名が利用した。

◆海外の動向、活用事例

欧米では公共の図書館でよく利用されている。NPOと連携して運営、音楽の作成に特化しているなどそれぞれの図書館に特色がある。

◆今後の展望

どこが障害になっているのか、一般の社会に広がるためには、どのような学術研究をすればいいいのか、利活用してる様子をみて、問題を見つけようとしている。例えば、3Dプリンタはよく壊れる、3Dデータの作成が簡単ではない、素材をいつまでも無料では使えないという3つの問題。


研究室で、早い、精度が高い、ひとつのプリンタをみんなで囲めるように360度から見れるデザインのプリンタをつくっている。パーソナルに向きあるという形の構成。


また、3Dのドローイングソフトの作成をしている。3Dをお絵描きと捉えて、空間の上に筆で絵を書くような感じのツールの導入。粘度で形を構成するような感覚で、直感的にデータがつくれるようにしたい。


3次元のシュレッダーもつくっている。シュレッダーをかけて、材料がまたつくれるというシステム。ペットボトルのゴミをリサイクルして材料にするということも今後やってみたい。いろんな実験を続けていきたい。

◆ひとつの街にひとつのファブラボをつくる時代

世界で200カ所以上あるファブラボ。20世紀はひとつのまちにひとつの図書館をつくった。文字の読み書きが市民社会のベースとして求められてきた。21世紀はひとつのまちにひとつのファブラボをつくる時代だ。地域の問題を地域で解決するものづくりが誰にでも必要なリテラシーとして求められる。アマチュアから専門家までがともに学びつくる場所として、ファブラボ鎌倉がある。地域とのコラボレーションをしている。高齢者向けのグーグルグラスの作成なども行なった。

◆なぜものづくり?

ものづくりをしないといけないのか?という質問がある。これまでの社会では、知識というものはほとんど文字で記述されてきた。自然言語がかなり大切にされてきたが、「もの」は特別な人がやる特殊なものという意識があった。ものに関するリテラシーが下がっている。震災を経て、身の周りのものがどのようにできているのか考え直す必要がある。


ものを読むというのはどういうことか?ものを読むというのは、昔のものを一度解体して、ものの仕組みを理解してよみこんで、本のように時系列で並べてみる。既存のものの仕組みを理解して本のように知識の仕組みのまとまりをつくるということを、ものを読むと読んでいる。Fablibの試みをやっている。


これまでの図書館は「文字」、博物館は「もの」と捉えられて来た。これからの時代は、知識を受け取るだけではなくてつくる、文字の読み書きではなくて、ものの読み書き、知識というものをもう一回再定義する必要がある。コンピューターの上でやるだけではなくて、マルチメディアでなくてマルチファブ。いろいろな素材に触れて、材料と対話をしながら、触れる知識というものをつくっていきたい。今後非常に大事になるのではないか。